深く、しなやかなる。(前半)
茨城県古河市、旧猿島(さしま)郡。
かつては茶の生産的北限と言われ、良質な深蒸し茶の産地として名を馳せた地。
そして今、緑茶とともに良質な国産紅茶を生み出す地として注目されている地である。
当店でも猿島の作り手の紅茶をご提供しているが、今年はぐんと種類を増やしてご提供。
今年は昨年とは少し異なる外観、以前よりも軽やかさを携えた香味。
飲み進めると、喉元で甘味と作り手独特の芳しい花香(萎凋香)が混じり合う、心地よい香りの質と長く続く余韻は昨年と似ていて、作り手の再現性の高さに感心する。
しかし以前よりぐんと円く、すっきりと透明感のある味わいに、今年の作り手の新たな試みを感じる。
それぞれの紅茶の、香味の複雑さとその絶妙なバランスに作り手の確かな技術と繊細な仕事を垣間見ることができる。
今年は全9種類の紅茶を入荷。
季節ごと、品種ごとに移りゆく作り手が醸す香味の妙をじっくり堪能できる。
数が多いため、今回は、前半後半2回に分けてご紹介。
前半は、今や作り手の顔となっているいずみという品種を使った紅茶から。
幻と言われた希少な「いずみ」という品種を復活させた作り手吉田さん。
いずみはかつて釜炒り茶用に育成された品種だが、発酵茶にも向いており、作り手によって丁寧に摘まれた葉は橘香、桃香、杏香、花蜜香が複雑かつ上品に香るフレッシュな春の香りをまとった紅茶として魅力あふれる香気を放っている。
昨年に続き春の初摘みから夏摘みまでを入荷したが、昨年の4種類に加えて今年は発酵が軽めの2ndフラッシュも加わった5種類を入荷。
いずみ1stプレミアム、いずみ1stシルバームーン、いずみムーンフラワー(Late 1st) 、いずみ2ndジューンブロッサム(軽発酵)、いずみ2nd。
グラデーションのようでありながらそれぞれの個性が立った、香り高きいずみという品種の多彩な香味を発見し楽しむことができる。
いずみ1stプレミアムは、春先に最初に伸びた柔らかな芽を使った紅茶で、その香りはまるでフレッシュで甘い完熟オレンジや蜜柑のようでもあり、柔らかく繊細な風味を楽しむことができる。
今年は昨年にも増して、穏やかで円みのある繊細さを帯び、とろりと喉を甘く潤すような印象で香りも穏やかだが、飲むほどに淡く重なり広がるジューシーな風味をゆっくりと味わいたい紅茶に仕上がっている。
柔らかさの中にも、いずみという品種の凛とした味わいも堪能できる、初摘みならではの特別な風味でもある。
いずみ1stシルバームーンは、いずみの春摘みの香味がギュッと詰め込まれたような作りの紅茶。
爽やかな柑橘香に、ネクタリンのような甘い香りや花蜜香が入り混じる。
今年は桃系の香りを追い抜くように、さっぱりとした柑橘香が引き立つ印象で、優しい風味ながら甘味旨味もしっかりと感じられる。柑橘香と極淡い渋味が、春摘みの柔らかで瑞々しい味わいを引き立て、飲み終わると甘味と香りが一体となり、心地よいしっとりとした花香の余韻が鼻腔をくすぐり、喉元に長く残る。
爽やかさの後におとずれるしっとりとした余韻を楽しめる仕上がりになっている。
いずみムーンフラワー(Late 1st)は、発酵が浅いいずみらしい若々しい柑橘香に、今年は白桃の甘い香がふわりと広がり、すんと清らかな花香の甘い香りと混じり合う印象で、さらりとした軽めの口当たり。
甘い香りと、軽やかながらしっかりととろみを帯びた甘い味わいを、淡くも凛とした渋味が引き締め引き立てるような立体感があり、軽やかだが飲みごたえのある紅茶。
1st でもなく2ndでもない、春の気配と夏の気配が入り混じる時期の、甘くかぐわしい香りの中に凛とした雰囲気を帯びた、いずみの魅力をぎゅっと詰め込んだ紅茶に仕上がっている。
今年新たに入荷した、ジューンブロッサムと名付けられた、いずみの2ndの軽発酵タイプの紅茶。
華やかな香味のいずみから、また新たな面白い香りが発せられている。
桃のような果実香の前に、桜桃(さくらんぼ)の香りとアニスに似た甘い香りが一瞬淡く漂い、作り手特有のたおやかに清く甘く香り立つ花香で終わるような香りの層。
店主にほんの少し、オランダやベルギーのアニスとチェリーのフレーバーがついたキャンディを想起させる。
夏芽らしいさっぱりきりりとした喉越しのよい、しかし柔らかさもある味わいの紅茶に、独特の甘い香りがすっと漂う。
個性的だが華やかにすっきりと調和した香味で、飲むほどにクセになりそうな風味を醸し出している。
いずみの2ndは、昨年と同じく発酵が深めで、熟れた洋梨や葡萄のような秋の果実を思わせる、しっとりと甘い香り。
夏摘みらしいさっぱりとした喉越しの中に、コクのある味わい、きりりとした渋味はあくまで上品に風味を綺麗にまとめている。
フルーティな華やかさで、軽やかながらコクの効いた印象的な風味。
フレッシュで爽やかな他のいずみの紅茶に比べ、さっぱりとしながらも香味に最も温かみを感じる。
ビスケットを添えたくなるその香味は、ダージリン2ndが好みの方にも満足いただけるような仕上がりの紅茶。
いずみという1品種から、季節ごとに変わりゆく香味を引き出していく。
当店で同じ品種をこれほど扱う(扱いたい)ことになろうとは。
作り手の茶を眺め味わいながら、茶葉から抽出される様々な香味をしっかり堪能していただくにはどうしたらいいのか、頭の中が忙しなくなる。
忙しないまま、この作り手の茶の紹介は後編につづきます。
お茶は通販サイト(https://shop.sarutoriibara-kocha.net/)でもご購入いただけます。
10月1日〜4日まで当店サイト(BASE)で使える5%offクーポンがあるそうです。
※コロナウイルスの感染は拡大しております。当店をご利用の際は、当店の階段登り口あるいは扉に貼っている、コロナウイルス感染対策の注意書きを必ずご一読いただき、ご納得された上でご入店ください。
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